2018.01.18

続く「痛み」のはなし

当たり前の話ですが、持続する体の痛みで病院へ通っている方は多いと思います。私としても、できるだけ皆さんの痛みを取ってあげたいという気持ちであり、その時々で最良と思われる治療を提案しているつもりです。今回は慢性疼痛に対する最近の考え方についてお話しします。

私が医師になった2,30年前は、痛いならばロキソニン等の痛み止めを、それが効かないならばそれはもう「うつ」状態だから向精神薬を、という感じでした。近年「痛み」に対する研究が進み、痛みには、侵害受容性疼痛・神経障害性疼痛・心因性疼痛の3種類があるといわれるようになりました。各々はきれいに分けることは難しく、重なっている場合もあるので難しいのです。

腰が痛い、膝が痛い、肩が痛い、と訴えは色々ですが、「痛い」と認識しているのは全て、脳です。体の各所から脳に痛いという信号が伝わって「痛い」と認識するわけです。様々な原因で痛みが持続する状態が続くと、脳の中で痛みを感じる部位が過敏になってしまい、直接的な原因、つまり手足からの痛いという信号が収まっても勝手に脳が「痛い」という認識を出し続けるようになる場合があります。つまり痛い場所はもう治っているのに脳が勝手に痛いと思い込んでいるだけという状態です。近年これを「慢性疼痛」の状態というようになりました。こういう状態に対する薬が最近数種類登場し、我々にとっても治療の選択肢は増えつつあります。

慢性疼痛に対する薬には主に3種類あります。

1.元々人間が持っている能力を利用するもの

痛みは当然人間にとって不快なものですから、脳からは余り痛い痛いと言うな、という感じで痛みが伝わってくるのを抑制する回路が存在します。これを「下降性抑制系」といいます。

戦場で腕を吹き飛ばされた兵士が、命からがら逃げて、自分の基地へ帰ってから腕の痛みに気が付く。これがこの回路が究極に働いた状態といわれます。そこまではいきませんが、この回路を元気にさせて、痛みを抑えるという薬です。

2.脳の中の、痛みを感知する部位の働きを抑えるもの

痛みを感知するのは脳ですから、脳そのものの働きを少し抑制します。これの強力なものが、いわゆるモルヒネ等の麻薬です。

3.向精神薬

精神的な疾患の一つの症状として、体中の痛みが出る場合があります。専門医に診察を受けて診断がつけば、その治療を受けることで痛みから解放されることは珍しくありません。

いずれの薬も脳や神経を休ませる作用を持ちますから、眠気や吐き気、便秘といった症状が副作用として出やすいです。この場合、それらを抑える薬を併用したりします。また種類によっては依存性やリバウンドを起こすものもあり、用法容量は正しく守らないと危険です。医師の指示を守って正しく適切に使えばかなりの効果が期待できます。私も実際多数の方にこのような薬を処方しています。自分がどうなのか、質問のある方は遠慮なく相談していただければ、と思います。