2017.12.17

膝の痛みに対する運動の効果 【yoc通信 58号】

膝が痛む疾患といえば、何といっても一番多いのは変形性膝関節症です。膝関節に加齢性の変形、あるいは外傷後の変形が残存し、疼痛・運動制限が生じている状態のことを言います。現在でも手術以外に変形を元に戻す方法はなく、変形があっても支障なく過ごせるような状態にコントロールすることが保存治療の基本になります。

コントロールの方法としては痛み止めの内服薬や外用剤、ヒアルロン酸注射、電気治療や温熱治療といった物理療法(機械でのリハビリ)があげられます。また膝の周りの筋肉を鍛える、あるいは柔軟性を出すといった訓練としてのリハビリの重要性が最近クローズアップされています。

2000年代に入り、膝の周囲の筋肉を鍛えることによって、痛み止めを飲んだりヒアルロン酸の注射を受けたときと同等の鎮痛効果が得られる、という医学論文が世界中から出るようになりました。筋肉を鍛えるリハビリを受けると、早い人は1か月で疼痛が緩和したとの報告もあります。また歩行、階段昇降、トイレ動作等の日常生活上の障害についても、訓練をすることですべてにおいて改善が得られるとの論文もあります。

さて、ではなぜ運動・訓練をすると痛みが軽減するのか?少し前までは筋肉がついて、膝関節の周りがしっかりするからではないか、という漠然とした理由があげられていました。しかし2000年代に入ってから、適度な運動刺激を関節の組織、特に軟骨細胞に与えると、細胞に炎症を抑える反応が起きることが明らかになりました。まず動物実験で、軟骨細胞を壊す薬を入れた関節に運動刺激を加えると、細胞が壊れるのが抑えられることがわかりました。でも運動刺激が強すぎると逆に炎症を悪化させる物質が細胞から出てきてしまうこと、またそれらの変化は遺伝子レベルでも起きていることもわかりました。そして人間においても、運動することにより関節の周りに炎症を抑える物質がでてくることが2010年に証明されました。

このように、適度に運動・訓練を行うことは、関節の細胞に働きかけて、細胞自身から炎症を抑える物質(いわば自らを治す薬)を出す効果があることがわかったわけであり、運動を適度に行うことの重要性が再認識されてきています。

2017.12.17

雨の日は調子が悪くなるのはなぜ?【yoc通信 60号】

近年天候の変化が激しくなり、「雨の日など天候が不順だと調子が悪いです」という訴えを患者さんからよく聞きます。今回は、なぜ天候が不順になると体の調子が悪くなるのかについてお話しします。

天気が悪くなるというのは、高い気温で温められた海水や空気が蒸気となったり山にぶつかったりして上にあがっていき、冷たい上空で冷やされて雨になって落ちてくる、という状態です。地表面は空気が上にあがってしまったために空気の量が少ない、すなわち「気圧が低い」状態になります。

気圧の変化はまず、体に物理的な影響を及ぼします。人間の体は「水の袋」と形容できるほど水分が多く、水分は圧力の低い空気中へ向かおうとするため、細胞内の水分も外に向かって膨張することになります。これがむくみであったり、血圧の下がる一因と考えられています。頭の血管が膨張すれば頭痛、喉の血管が膨張すれば気道が腫れて喘息という症状ににもつながるわけです。

次に人間には、体の調子を整える自律神経というシステムが存在します。天候が悪くなると、呼吸から「酸素が薄い」、目から「光が少ない(暗い)」、また内耳にかかる圧力の変化で「気圧が低下した」ことを感知します。そしてこれらの条件を「活動に適さない環境」と判断して、副交感神経を優位に働かせ、体を「休息とエネルギー蓄積のモード」に切り替え始めます。

低気圧になるとだるい、眠い、疲れるという症状を感じるのはこのためです。自律神経の調整がその変化に少しずつ同調して追いついているなら、それほど大きな不調原因にはなりません。追いつかない、もしくは行きすぎてしまったとき「不調」と感じます。また同じ気圧の変化であっても、高くなるとき、すなわち天気が良くなっていくときには、物理的な悪影響はあまりありませんから、不調が出ることも少ないと考えられます。

これに加えて、ヒスタミンという体内物質の分泌による追い打ちがあります。ヒスタミンは外部刺激があると肥満細胞といわれる細胞から分泌され、免疫活動に指令を出す働きをします。しかしこれも過剰に働いてしまえば、花粉症を代表とするアレルギー症状となります。最近、低気圧にさらされるとヒスタミンの分泌が増えることがわかりました。副交感神経の過剰な働きに加えてヒスタミンの過剰な作用も加わり、「不調」もひどくなってしまうことになります。

このように、低気圧による不調の原因の多くは自律神経の調整が追いつかないことと、ヒスタミンの過剰分泌によるものです。ということは、ただでさえ自律神経に負担がかかっている更年期女性、普段から冷え気味のサラリーマンや若い女性、睡眠サイクルが良くない人は不調が出やすくなります。ですから対処法としては自律神経への負担になる暑さ、冷え、睡眠不足を避けるようにすること。アレルギーのある人は、その対策を講じていれば不調を軽減できる可能性があるということです。

2017.12.17

グルコサミン、コンドロイチンは効くのか?【yoc通信 63号】

日々診療をしていますと、よく質問されることの一つに「グルコ何とかって、効果あるんですか?家族に勧められるんやけど」というのがあります。今回はそのお話を。

グルコサミンは1998年、米国の健康コラムニスト、Brody女史によるNew York Timesの記事で、「関節を痛がり走らなかった自分の犬にグルコサミンとコンドロイチンの入った餌を食べさせたら元気に走るようになったので、私もこれを始めたら膝の症状がよくなった」という記事から流行りだしました。色々な会社から販売されていますが、医学的にはどのような効果があるのでしょう。

とある広告によれば、「グルコサミンやコンドロイチンは関節の軟骨の重要な成分であり、加齢に伴い不足してくるので、それを補給してあげることは大事です」と書かれています。この文言を医学的に検証しますと、「加齢に伴い不足してくる」までは概ね正しいのですが、「補給してあげる」というところが間違っているのです。グルコサミンなどを飲んでも、それらは全ていったん胃袋でとかされ、分解されます。アミノ酸という分子にまで分解されて、それが吸収されて体内に入るのですが、それが関節の軟骨のところへ行って、元通り軟骨の成分になる保証はありません。実際にグルコサミンに特殊な印をつけて飲んでから、それが関節の軟骨に届いているか調べた学者がいますが、結果はまったく届いていないという結果でした。

筋肉成分だとかヒアルロン酸だとか、色々手をかえ品を変え皆さんを誘っていますが、口から食べたものは全部胃袋で分解されるので、何を食べても同じです。広告の言い分をいいかえれば、「髪の毛の薄い人は、髪の毛を食べれば髪の毛が生えてくる」と言っているのと同じなのです。皆さん、生えてきそうだ、と思いますか?

実際に飲んでる方もおられます。飲んでいると調子がよくなったという方もおられます。そういう方に飲むなとは言いませんが、医学的には意味がないというのが今の見解です。ではどうしてそんな詐欺まがいの広告がまかりとおるのか。それは、これらサプリメントはすべて「健康食品」であって「医薬品」ではないからなのです。医薬品であれば、医学的なデータをだして効果を実証する必要がありますが、食品ですからその必要がないのです。

またこういうものにはたいてい、ビタミン成分が一緒に入っています。そのあたりの効能で元気になっている可能性が高いと思われます。毒にはなりませんが、薬にもならない。値段もまあまあしますし、お金に余裕のある方は飲んで悪くはないのでは?というのが私の今の見解です。

ちなみに流行のきっかけを作ったアメリカのBrody女史は、その後膝の痛みが悪化して人工膝関節を入れる手術を受けています。推して知るべし、ですね。膝の痛みを取るためには、やはりその人に応じた適切な治療が必要です。皆さん、診察をうけましょう。